今日は、まだ冬ではないというのに、少し冷える。

 

少し空が曇っているのもあるが、いつもより気温が低い気がする。

 

風邪などをひいたりしてはいけないな、と思っていた時…。

 

 

「くしゅっ」

 

 

何処かからか、くしゃみをする声が聞こえた。

 

襖の向こうの廊下からだ。

 

…あの声は、絶対に千鶴だと思うが。

 

 

「……どうした?」

 

 

襖を開けて外を見れば、案の定千鶴がそこに居た。

 

着ている着物は、今日の気温には不似合いだ。

 

このままでは、風邪をひいてしまう。

 

 

「あ、あの…土方さんが、斉藤さんに用があるらしくて…くしゅっ」

 

 

またも、千鶴はくしゃみをしてしまう。

 

心なしか、顔色が悪い気がする。

 

体も、微かに震えている。

 

 

「…もう少し、服を着てはどうだ」

 

「へっ!?あ、そうですね」

 

 

驚いたようにこちらを見る千鶴。

 

…駄目だ、今すぐ何か着せなくては。

 

俺はそう思ったが、手ごろなものが近くに無い。

 

ましてや、男物の俺の服は、千鶴には大きすぎる。

 

 

「……こっちにこい」

 

「え?」

 

 

俺が呟くと、千鶴は一瞬戸惑った顔をしたが、こちらに歩いてきた。

 

近くまでくるのを確認すると、千鶴を抱きしめた。

 

 

「え、ちょ、斉藤さん!?土方さんが…」

 

「…このままでは風邪をひく。…しばらく、こうしていろ」

 

 

…口ではそう言ったが、実際は千鶴を抱きしめるための口実なのだが。

 

それに、どうせ土方さんのところへ行かなければいけないし、長くはできないのだが…。

 

しばらくしたら、離して、服を着るように注意するか。

 

 

「…温まったら、離してやる」

 

 

千鶴は真っ赤な顔で固まっている。

 

俺はそっと、千鶴の小さな白い手を握った。

 

……鼓動が、伝わるような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

触れ合ったその指先から…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の思いまで、伝わる気がした。