ぶらりぶらりと歩いてみるが、何処が出口なのか分からない。
人と出会わないように、なるべく気配を殺して進むが、目的の場所は何処なのか。
(…迷った……?)
そんな馬鹿なと思うが、実際道が分からないのは事実だ。
人に聞くと何か起こりそうだし、このまま迷い続けても時間の無駄だ。
それに、今は静かだがいつ人が来るか分からない。
早急にここから立ち去らねばならないと、自分の勘が告げていた。
(……でも)
どうする事も出来ないこの状況だ。
一体何をすれば解決するのか、答えが全く分からない。
どうしよう、そう思っていると、向こうから人影が見えた。
ヤバイ、と思い隠れようとしたが遅すぎた。
せっかちなのか歩くのが早く、すぐに目が合ってしまったのだ。
「…ぁ」
視界に見えたのは、若い男性だった。
茶色の髪の毛に、気の強そうだが穏やかな瞳。
額には、何か鮮やかな色の布を巻いている。
目が合った瞬間、むこうは手を振ってきた。
「おぉ、新しい入隊者か?初めて見る顔だな」
明るく穏やかな声でそう言われ、肩をバンバンと叩かれた。
どうやら、自分はこの場所に関係の無い人間だとは、バレてはいないようだ。
「……こん、にちは」
無視をすれば変に思われる、そう直感的に思った。
歯切れ悪くそう挨拶すると、その男性は微笑みながら問いかけた。
「やっぱ新しい入隊者か。何番組に所属すんだ?」
それを聞いた瞬間、返答に困った。
新しい入隊者か、何番組に所属するのか。
それらの言葉は、生きていく為に必要ではないモノである。
それと同時に、自分に全く関わりの無い知らないモノでもある。
どう答えればいいのか、頭が真っ白になった。
「………三番組、です」
怪しまれないように、とりあえず無難な数字で答えてみた。
何番組、という単語が出てきたから、おそらく番号で区別されているはずだ。
上手く誤魔化せたか、と思ったが、それは少しの間だけだった。
「…三番組……?」
すぐにその男性は首をかしげる。
おかしいな、と小さく呟いて、こちらをじっと見てきた。
「斉藤とはさっきまで話してたが…新しい入隊者なんて聞いてないぞ?」
そう言いながら、こちらへゆっくりと歩み寄ってくる。
絶対に怪しまれた、直感的にそう思った。
「ついて来いよ。斉藤に会わせてやる。お前のこと、忘れてるのかもしんねえしなぁー」
豪快に笑いながら、こっちへこいと手招きしてくる。
その誘いに、素直に頷くことは出来なかった。
絶体絶命って、こういう事か。