永倉さんは、私にはいつも優しい。
兄が居たらこんな感じなのかな、と時々思う。
太陽みたいな暖かい存在で、いつも私を励ましてくれる。
そんな永倉さんが、私は単純に好きだと思えた。
父様が居ない今、家族のような永倉さんの存在は、素直嬉しかった。
(……でも)
迷惑じゃないのか、そう聞きたいと思った。
私の存在が重荷になっているのなら、素直に教えて欲しいと思った。
思わず泣きそうになって必死にこらえるが、涙が一粒溢れた。
…何故、こんなにも悲しいのかが分からなかった。
すると、頭上から、聞き慣れた優しく暖かい声が降ってきた。
……永倉さんだ。
「お、千鶴ちゃん。…って、どうした!?」
泣いてるじゃねえか、と永倉さんは私を気遣ってくれる。
私は必死に涙を止めようとするけど、結局は永倉さんの顔を見ただけで更に泣きたくなってしまう。
「何かあったか?まさか、どこか怪我したか!?」
私が泣いている間にも、何度も頭を撫でて心配しつくれる。
「ち、違……そうじゃ、なく、て………っ」
だんだんと、涙は止まってきた。
きっと、永倉さんのおかげなんだと思う。
でも、何でそんなに優しいの…?
聞かずにはいられなくなった。
「落ち着いたか?悩み事なら、俺様にどーんと話してみろ!な?」
優しい貴方が好きです。
でも、その優しさには、どんな理由があるの…?
「……永倉さんは、何でそんなに優しいんですか……?お、女の人が…好きだから、ですか……?」
前に平助くんが言っていた言葉を思い出して、問いかけてみる。
様子を伺うと、永倉さんはひどく驚いた顔で、私を見つめていた。
「な、永倉さん…?」
居場所に困って、思わず名前を呼ぶ。
すると永倉さんは、我に返ったようにハッとして、恥ずかしそうな曖昧な表情を見せた。
それは、さっき聞いた事が本当だったからなのだろうか。
胸の奥が、ズキッと痛むような気がした。
「……好きなのは、女じゃない」
「え?」
「好きなのは、女じゃねえんだよ!」
そう言われて、強く抱きしめられた。
「…お前だよ、俺が好きなのは」
言われて、初めて気が付いた。
私は、永倉さんの事が、家族以上として好きだと。
「私も……」
好きです、伝えた瞬間に口付けられた。
…改めて、この人が好きなのだて、実感する。
「…一生離さねえから、覚悟しとけよ」
嬉しすぎるその言葉に、私は心から頷いた。
優しさの理由
お前に惚れてるからだよ。