季節は夏となった。


新選組の隊士たちは、この暑さのせいで体調を崩してばかりだ。


最近では、あの土方さんまでもが体調が良くないらしい。

 


(心配だなぁ

 


滅多に弱音を吐かない土方さんが、体調を崩しているのだ。


心配で心配で、たまらなかった。


看板したいが、邪魔だと言われるのが怖い。


せめて、何か手伝えれば良いのだが。


ぼんやりと空を見上げると、すがすがしいほどの青空が広がっていた。


雲は綿菓子のようにふわふわと浮かび、千鶴はその景色に目を奪われた。


すると、

 


「こんにちは、千鶴ちゃん。良い天気だね」

 


見上げていた景色の中に優しく微笑む沖田が居た。


何か企んでいるような、裏のある笑い方だ。

 


「沖田さんこんにちは。どうかされたんですか?」

 


不思議に問いかけると、沖田はにこりと笑って、千鶴の腕をひっぱる。

 


「今日は一番組が巡察の日なんだけどさ。一緒に来ない?最近はこの辺りは安全だし、何か美味しいものでも買いにいこうか」

 


僕がご馳走するけど、と優しく微笑まれた。

 


「それに、土方さんがあの調子だしね?」

 


最初は言葉の意味が分からなかったが、すぐに状況を理解した。

 

 

「ぁ土方さんに、何か精のつくものを買いに行くんですか?」


「まぁ、そんな感じ。あの人が調子悪いんじゃ、新選組も調子出ないしね」

 


それに、と言い、沖田は何かポツリと呟いた。

 


ちょっと、からかってやろうかなと思って」


「え?」

 


上手く聞きとれず、首を傾げたが、沖田は何でもないとはぐらかした。

 

 

 

 


それから、一番組に同行して巡察を終えた。


土方さんのお土産に、甘い物を沢山買ってきた。


さっそく、沖田さんと一緒に土方さんの部屋へと行く。

 


「失礼します」

 


そう言って中に入ると、そこには不機嫌そうな顔をしながら座っている土方さんが居た。

 


お前、今まで何処に行っていた?」

 


低く唸るように問われて、驚きを隠せない。

 


「やだなぁ、土方さん。ちょっと遅くなったくらいで、そんなに怒られても困りますよ。ただ巡察に行ってただけじゃないですか」


ただの巡察で、ここまで帰りは遅くならないはずだが」

 


どこか、怒っているように見えて、体がこわばる。

 


あははは。そんなに僕の側に居させたくないなら、自分の側に置けばいいのに」

 


馬鹿みたい。


そう呟いて、沖田は部屋を出ていった。

 


「千鶴ちゃん、頑張るんだよ」

 


それだけ、私に言い残した。

 

廊下には、沖田の声が響いている。


予想通りだ、土方さんってば、という声。


まるで、わざと大きな声で話しているような独り言だった。


ハッとして、目の前の土方さんに目を向ける。


未だに、彼は不機嫌そうに目を細めていた。

 


「あ、あの……

 


口を開けば、有無を言わせず抱きしめられた。


もう何度かこうされた事はあるものの、やはり恥ずかしくて慣れない。

 


「ひ、土方さん!?」

 


驚いて声をあげると、深く口付けられた。


息が苦しくなって口をうっさら開けば、舌がぬるりと入りこんでくる


体がゾクゾクと震え、顔が真っ赤に染まる。


角度を変える度に、どちらかも分からない吐息がもれる。


水音が静かな部屋に響き、体がほてっていくのが分かった。


ようやく唇を解放された時には、もう体がとろけそうになっていて、支えられるように再び抱きしめられた。

 


………総司の側に居るくらいなら……俺の側に居ろ」


「ぇ…………?」


思わず疑問の声を出せば、顔を少し赤くした土方さんが、そこに居た。

 


総司に嫉妬してんだよ、馬鹿」

 


思わず顔がほころぶ。


土方さんに、そう言ってもらえて嬉しいと感じてしまう。

 

愛しいという気持ちを抑えられなくなって、思わず土方さんの背中に手を回した。


鼓動が、お互いに伝わってくる。


それがなによりも嬉しくて、甘えたように土方さんに呟いた。

 


……もっと、妬いてください」

 


我ながら、ワガママだとは思う。


けど

 


馬鹿。俺の身がもたねえよ」

 


優しく微笑みながらそう言ってくる土方さんから、愛されていると実感させられたい。


私は、この人が大好きなんた。

 


大好きです、土方さん」

 


そう言いながら微笑むと、照れたように、答えを返してくれる。

 


「俺はそうだな……

 


優しく甘い笑顔で、


 

 

 


愛してる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛の葉を

 

 

 

 

 

 

 

君が望むのならば、どれだけでも。