目の前で、嬉しそうに笑う女。
…俺はどうやら、お前の事が好きらしい。
「斉藤さんに、剣術について褒めて貰えたんですよ」
「……あの斉藤が、ねぇ」
本当に輝かんばかりの笑顔で、俺にむかって話す千鶴。
少し、イライラする。
……理由は、何故だろうか。
「でも、結局斉藤さんには負けちゃいましたけど」
「当たり前だ。斉藤がお前に負けるなんてありえねぇからな」
そう冷たく言い放つと、千鶴は少し落ち込んだようにシュンとなる。
思わず抱きしめたくなるのを、ぐっとこらえて、千鶴の方をチラリと伺う。
「でも、褒めてもらえただけで嬉しかったです」
また、笑顔に戻って、斉藤とやった試合について語る千鶴。
……あぁ、分かった。
俺以外の奴の話なんかするから、イライラしてんだ。
「本当に嬉しかったです…ちょっとは、斉藤さんに認めてもらえたのか…」
「黙れ」
「……ぇ?」
「喋るんじゃねぇ」
俺はそう言い捨てると、千鶴を抱きしめた。
首筋に顔をうずめて、千鶴の甘い匂いに溺れる。
「あ、あの…土方さん!?」
千鶴は、驚いたような声をだした。
首が真っ赤に染まっている。
どうせ、顔も真っ赤になっているに違いねぇな。
「……俺と居るのに、俺以外の奴の話なんかするな」
そう言い捨てると、千鶴を強く抱きしめた。
大人しく俺の鼓動を感じていろ。
いさぎよく、俺のモノになっちまえよ。