大好きな貴方が傍にいて。
毎日が楽しくて、嬉しかった。
「おはよう、平助くん」
朝日が眩しい早朝、私は平助くんを起こそうと呼びかけた。
一緒に寝るのはいつまでも変わらない。
それこそ、習慣のようなものになっていた。
平助くんの体温を感じると、胸が高鳴る。
それが彼に知られると、嬉しそうに微笑んでくれる。
気が付けば、平助くんの鼓動も私と同じ蔵言速かったりして。
私も、思わず顔がほころんでしまう。
「…平助、くんー…?」
確かにそこに居るのに、平助くんは返事をしない。
可笑しいな、と疑問に思って、私は布団から出た。
するとそこには、すやすやと眠っている平助くんが居た。
「……か」
可愛い。
女の私が言うのも可笑しいが、本当に可愛い。
長いまつげ、整った顔立ち、小柄な体。
そんな平助くんが、ごろりと布団の上で無防備に寝ている。
「……可愛い…!」
思わず近くに寄って、寝顔を盗み見る事にした。
こうして見てみると、本当に綺麗な顔立ちをしている事が、改めて分かる。
私の大切な人であり、最愛の人。
その人がこんなにも素敵な人だなんて、恋人として、妻として嬉しく思う。
まだ正式に結婚した訳では無いけれど、もう私のお腹の中には子供が居る。
男の子か女の子かは、まだ分からない。
「……どっちでも、良いなぁ…」
思わず呟く。
だって、平助くんの子供なら、きっと男でも女でも可愛いと思うから。
「…お父さんに似るといいね」
微笑んで、少し膨らんだお腹を、そっと撫でた。
名前は何にしよう、そう考えていた時に、不意に腕を掴まれた。
「…………おはよ」
いつの間にか、平助くんは起きていたらしい。
寝癖のついた髪が、とても可愛くて愛しく思う。
「おはよう、平助くん。…えっと、何かあった?」
平助くんは、私の腕を掴んだまま離してくれない。
じっと見つめられて、また胸が高鳴る。
寝起きだからなのか、着物の胸元ははだけていて、それに健康そうに日焼けした足がチラリと見えている。
なんだか直視出来ないくらいの色香が漂っていて、不思議と目線を逸らしてしまった。
「…冗談じゃないんだけど」
「え?」
「俺に似た子供とか、冗談じゃねえよ。…どうせ似るなら、可愛いお前に似た方が良いのに」
ボッと顔が急に火照るのを感じた。
自分でも分かるくらいに、体が熱くなる。
「……そ、そんな…」
恥ずかしくて恥ずかしくて、近くにあった賭け布団に顔をうずめる。
そんな心臓に悪い事、サラッと言わないでほしい。
「…ほら」
平助くんの、嬉しそうな笑い声が聞こえる。
「そんな所が、すっげえ可愛いんだけど」
その言葉を聞いた時、私の心臓は壊れそうになった。
キッと睨みつけるように振り向いても、平助くんはただ嬉しそうに微笑むだけ。
「そんな睨んでも、可愛いだけだって」
はは、と笑う彼がとても憎たらしい。
けれど、とても愛おしい。
憎たらしい貴方
だけど、それ以上に愛しています。