千鶴を守りたい、だからこの身を羅刹と化した。

 

どんな姿になっても、あいつを守りたいという気持ちは本物だから。

 

 

(……俺は…)

 

 

千鶴が好きなのだろうか。

 

そう考えた瞬間、顔が熱くなるのを感じる。

 

皆で馬鹿騒ぎして、酒で酔った時よりも、凄く熱い。

 

それに心が苦しくて、とても痛い。

 

 

(………俺は…)

 

 

人を愛しても、良いのだろうか。

 

鬼であろうとなかろうと、千鶴は愛すべき大切な存在なのだ。

 

でも、自分は

 

 

(…俺は、羅刹で人じゃ無い)

 

 

人の血は、もう既に羅刹の血に呑まれているのだろうか。

 

戦う度に、血を見る度に、変わっていく自分が怖い。

 

そんな自分を、千鶴は見てくれるのだろうか。

 

一人の男として、愛してくれるのだろうか。

 

 

(…俺、は)

 

 

愛してる、心の底から。

 

千鶴を、千鶴だけを愛している。

 

けれども、戸惑いがある、不安がある。

 

千鶴は鬼であって羅刹では無い。

 

血に狂った自分とは違う、そう強く感じている。

 

血に狂った者が持つ思いは、愛と呼べるのだろうか。

 

 

「…ちづ、る……」

 

 

愛してる、お前が傍に居ると、たったこの一言が言えない。

 

拒まれるのが怖くて、言えない。

 

 

「…好きなんだ、千鶴……っ!

 

 

狂いそうで、可笑しくなる。

 

こんなにも愛しているのに、その気持ちを信じきれない。

 

どれだけの思いならば、愛と呼べるのだろうか。

 

 

「千鶴…っ」

 

 

お前が傍に居ないだけで、こんなにも痛い。

 

羅刹は、人を愛してもいいのだろうか。

 

この思いを、愛と呼んでいいのだろうか。

 

 

「…あいつが」

 

 

俺の、たった一人の。

 

 

「…あいつだけが……っ」

 

 

俺の唯一の、希望。

 

壊したくない、大切な、大切な人で。

 

 

「……お前は…」

 

 

こんな俺を見て、幻滅しないでくれるだろうか。

 

いつものように、笑ってくれるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

れた

 

 

 

 

 

 

愛しているから、伝えられない。