先程から、隣で千鶴が悲しそうな顔をしている。

 

…何か、嫌な事でもあったのか?

 

 

「千鶴、何かあったのか?」

 

「……平助君」

 

 

俺が呼びかけると、安心したような表情を見せる。

 

でも、まだどこか心細そうに見えて…

 

抱きしめて、安心させてやりたい。

 

守ってやりたい、そう強く思った。

 

 

「………あのね、スズメの雛が、巣から落ちていたの」

 

「スズメ、が?」

 

 

口を開く千鶴の話を、真剣に聞く。

 

巣から落ちていたという事は、まさか…。

 

 

「戻してあげようと思って、拾ったんだけど……」

 

 

そこで、千鶴はポロポロと泣いてしまった。

 

やっぱり、雛が巣から落ちて死んでいたんだな。

 

…スズメの為に泣けるお前の心には、心底関心するよ。

 

 

「もう、冷たくなっちゃってて……」

 

 

ぐすぐすと泣き出す千鶴。

 

…今なら、抱きしめても、良いか?

 

そう思って、千鶴を腕の中へ引き寄せた。

 

 

「へ、平助、君?」

 

 

驚いて、涙の残る目を見開く千鶴。

 

俺は微笑むと、千鶴を抱きしめた。

 

ポンポンと背中を叩いてやると、安堵したような息が聞こえる。

 

 

「泣くなよ。お前が泣いてたら、俺も悲しいじゃんか」

 

 

そう言ってやると、千鶴はまたポロポロ泣き出した。

 

 

「だって、だって…もう少し早く気付いてたら…っ」

 

 

優しいな、千鶴は。

 

自分以外の為に泣ける…俺の為に、泣いてくれる。

 

そんな千鶴が、愛おしくてたまらない。

 

…俺は、千鶴の笑顔が見たい。

 

 

「馬鹿。お前にそんだけ思われてんだ。…それだけで、幸せだったさ」

 

 

そう言って、よりいっそう強く、抱きしめた。

 

 

「笑えよ。…その方が、スズメも喜ぶぜ?」

 

 

そう千鶴に言えば、半泣きになりながらも、無理矢理笑顔を作る。

 

ありがとう、と俺にお礼を言う。

 

 

「そ、だね…慰めてくれて、有難うね、平助君」

 

「ばーか。お前が泣いてるの見たら、慰めるのが当たり前だろ」

 

 

そう言って、俺も笑顔になる。

 

千鶴も、俺につられて笑顔になる。

 

…俺は、その笑顔を見れるだけで、満足なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからもっと、笑顔を見せて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺に生きる希望をくれないか?