穏やかな午後の昼下がり。
少し肌寒い風が吹いているが、心はほんのり暖かい。
理由は、隣に大切な人が居るから。
「…もう秋ですね、左之助さん」
私がそう呟くと、隣にいる愛しい貴方は微笑んでくれる。
その微笑みに、思わず見とれてしまう。
赤くなって見つめていると、苦笑されてしまった。
「どうした?俺の顔、なんかついてたか?」
頭を優しく撫でられて、余計にドキドキしてしまう。
彼の掌からほんのりと伝わる体温が嬉しかった。
何も喋れなくて黙り込んでいると、左之助さんは私のお腹に視線を向けた。
「…いつ生まれてくるのか…分かったら、苦労しねえのにな」
ため息混じりにそう呟くが、顔は嬉しそうにほころんでいる。
子供が出来た事が分かって、一番喜んでくれたのは左之助さんだ。
何度も近所の人に自慢していたのを、良く覚えている。
名前は何にするかはまだ決まっていないが、一生懸命育てたい。
男か女かも分からないが、大切にして愛情を注いでやりたい。
これが、親というものなのだと、初めて理解できた。
「…2人で、守ってあげましょうね」
私が微笑みかけると、左之助さんも微笑んだ。
ゆっくりと私を抱き寄せると、耳元で囁かれる。
「俺が千鶴と…生まれてくるこの子を守る。だから心配ねえ、お前はいつも通り…俺の帰りを待っててくれればいい」
そう言うと、首に触れるだけの口付けをおとす。
場所が場所ながらに、少しくすぐったかった。
「また、うまい茶でも淹れてもらうとするか」
よいしょと立ち上がった彼が、私にそう微笑む。
私は頷いて、お茶の準備をしに台所へと急いだ。
穏やかな日々を貴方と
傍に居るだけで、穏やかになれる。