とある穏やかな昼下がり。

 

1人で槍の手入れをしていた時、千鶴がやってきた。

 

 

「こんにちは、原田さん」

 

「よぅ。どうした、何かあったか?」

 

 

嬉しそうに微笑む千鶴は、何か楽しい事でもあったかのようだ。

 

俺以外の奴が、お前にそんな顔させてんの?

 

そう考えるだけで、胸の奥がムカムカとしてくる。

 

 

「原田さんが槍の手入れしている所、初めて見たんでちょっと嬉しいかなぁって

 

俺の手入れをする姿は、別に珍しくもなんともないと思うがなぁ」

 

「原田さん、剣も槍も凄く強くて、尊敬してるからこういう姿が見られるのは嬉しいです」

 

 

微笑んで、千鶴は俺の横に座る。

 

俺がこんな笑顔をつくってやれたかと思うと、顔がニヤけそうになる。

 

だらしない顔をするのは御免なので、勿論我慢するが。

 

 

「ありがとよ。誰かに尊敬されるのは、嫌な思いはしねぇな

 

 

俺が手入れをしながら呟くと、千鶴はふふ、と花が咲くように笑った。

 

 

「原田さんって、どうしてそんなに強いんですか?」

 

俺が?」

 

 

そりゃあ毎日稽古してるからと答えそうになったが、一瞬ためらう。

 

……答が出そうで、出ない。

 

そもそも、俺が命がけで戦うのは新撰組の為だし、千鶴を守りたいと思うからで

 

 

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気付いた、そうか、そうだったんだ。

 

 

「知りたいか?」

 

「はいっ。どんな稽古をしてるんですか?」

 

 

馬鹿、ちげーよ。

 

俺はそう言うと、千鶴の唇に自分の唇を重ねた。

 

一瞬触れるだけの、優しい接吻。

 

 

「な、は、原田さんっ」

 

 

赤くなって混乱する千鶴は、いつにもまして可愛い。

 

あぁ、こいつが傍に居るから、俺は強くなれるんだ。

 

 

お前を守りたいと思うから」

 

「え?」

 

「もう言ってやらねぇよ」

 

 

意地悪くそう呟くと、話を聞いていなかった千鶴に、もう一度口付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いくらでも強くなれるよ、お前の為なら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

傍に居る限り、守ってやる。